皆既月食はめったに見られない天体ショーということで、宙を見上げる楽しみのひとつ
しかし、天文学が今のように発展していなかった古代では
多くの地域で皆既月食が「世界の混乱や危機」の訪れを表していると考えられ
人々はそれを防ぐために、祈りを捧げていました
古代の人々は皆既月食をどのように捉えていたのかまとめました
◇ジャガーに襲われ負傷する月
古代インカ(現在の南アメリカのペルー、ボリビア、エクアドル付近)では、ジャガーが月を襲ったために、月が血のように赤色に染まっていくと考えられていました。
インカの人々は、「月を襲ったジャガーが次は地上に降りてくる」と恐れ
槍を空に向かって振り上げたり、犬に遠吠えさせてジャガーを追い払おうとしました
ジャガーは古代インカの人々から神として崇められていた存在
そのジャガーが月を襲うほど怒ったと考えたら
とんでもない災いが地上にもくると、恐れたのかもしれません
◇王の身代わりをたてろ!
古代メソポタミア(現在のイラク付近)では、月食を王様への攻撃であると考えていました
王様を守るために、月食が起こる時期を予想し、その期間は王様の身代わりを用意しました
身代わりに選ばれた人は、実際に王の仕事を行うわけではありませんでしたが
王と同様に丁寧な扱いを受け、一方で本物の王は一般人のように装いました
月食を終えると、身代わりのほとんどは行方不明となっていたので
災いを恐れ毒殺されていたのでは?と考えられています
◇月が元気になりますように・・・
アメリカ カリフォルニア北部の先住民、フーパ族は
月は20人の妻と多くのペットを持っていると信じていました
ペットの多くは、ライオンやヘビなど
そのペットたちが、十分な餌を与えてもらえないと月を攻撃します
月食が始めるときは、攻撃された月が流血し赤色に染まりはじめた合図
負傷した月のもとへ妻たちがやってきて、流れ出た血を集め治療を行い、
月が元の姿になると月食が終わりとされていました
また、カルフォルニア南部のルイセーニョ族では
月が病気になるため、月食が起こると考えていました
人々は月の病気が治り、元気になるようにと歌や祈りを捧げていました
月食が終わり、月が元通りの姿になると
きっと人々は安堵し穏やかな夜を迎えることができたでしょう
天文学の発展により、月食のしくみが解明した今
私たちは、何も恐れることなくその時を迎えることができます
しかし、当時の人にとってはどれだけ不思議で恐ろしい現象だったかを想像してみると
月食という現象が、より神秘的に感じられるかもしれません